日本に古くから伝わる儀式「結納」。
古来のスタイルは、仲人が使者となり両家を行き来する「正式結納」ですが、現在は、仲人を立てない方が増えたり、家に床の間がないなどの理由から、 一堂に会して結納品を取り交わす「略式結納」が主流です。
結納品を取り交わさない両家の顔合わせを兼ねた食事会も増えています。
結納の歴史
もともと女系社会の日本では、男性が女性の家に入る「婿取り婚」が一般的な婚姻スタイルでした。
これが室町時代に武家の天下となり、男系社会が確立し、女性が男性の家に入る「嫁取り婚」へと変わっていきました。
その際、小笠原流などの武家礼法の諸流派によって、平安時代に貴族が行っていた婚礼儀式に中国の婚礼制度が取り入れられ、現在のような結納の作法が整えられました。
当時は公家や武家の間でのみ行われ、庶民には別世界のものでありました。
江戸時代になって裕福な商家では結納が行われるようになりましたが、庶民が結納を行うようになったのは、明治時代になってからだといわれています。
結納と文献
結納の一番古い記録は、約1,400年前の平安時代。
仁徳天皇(313〜399年)の皇太子(後の履中天皇)が黒媛を妃としてむかえるときに「納采(絹織物・酒・肴)」が贈られたと日本書紀に記されています。
結納の語源
結納の語源にはいくつかの説があります。
結いのもの
これから両家が新しく姻戚関係を結ぶため、男性から酒や肴を持ち寄って飲食を共にして、 結び申しいれて祝いあう時の酒肴を「ゆいのもの」が由来。
結納品に酒、するめ、昆布の品が使われているのは、その名残だとか。
言い入れ(いひいれ)
婚礼を申し込むと言う意味の「言い入れ(いひいれ)」が由来。
語形変化して「結納(ゆいのう)」となったとされる。
六礼
中国の「禮記」に婚礼に先立って行わなければならない儀礼として記されている「六礼」が日本の習慣と結びつき、日本語に変化したのが由来。
納采(のうさい) | 男家が仲人を介して礼物を女家に持って行き求婚すること。 |
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問名(ぶんめい) | 男家が書いた招待状と礼物を仲人とともに女家におくる。 仲人は女性の名前と生辰を受けて帰ってくる。 |
納吉(のうきつ) | 男家の先祖位牌の前で結婚を占い、その結果を仲人が女家へ知らせる。 |
納徴(のうちょう) | 占いの結果が良ければ、男家が嫁をもらう代償として女家にそれ相当の金品を渡す。 |
請期(せいき) | 男家で吉日を選び、婚礼の日取りを男家から女家へ知らせる。 |
親迎(しんげい) | 新郎が仲人とともに女家に新婦を迎えに出向く。 |